「Huawei P30」の発表後の感想をまとめています。最上位モデルであるP30 Proに注目が集まりがちで、P30 Proよりも多少スペックがダウンしているものの、それでもフラッグシップとしては十分に高性能といえるP30。
処理能力はP30 Proと同等で、背面にはトリプル・レンズ・カメラ (広角・標準・望遠)を備え、ディスプレイもOLED(有機EL)と例年の”通常版”よりもスペックアップしている。
それでは詳しく見てまいりましょう。
アイキャッチ画像、記事内画像はHuawei Global公式サイトと公式YouTube動画よりスクリーンキャプチャ:https://consumer.huawei.com/en/phones/p30/
主なスペック & 価格
チップ | Kirin 980 |
RAM | 6 / 8 GB |
容量 | 64GB/128GB/256GB NM カード (~256GB) |
画面 | AMOLED 6.1 インチ 解像度:2340 x 1080 (422ppi) スクリーン対ボディ比:85.8% |
カメラ | 背面: 広角 1600万画素 F2.2 標準 4000万画素 F1.8 望遠 800万画素 F2.4 光学式手ぶれ補正 (OIS) 電子式手ぶれ補正 (EIS) インカメラ: 3200万画素 F2.0 |
バッテリー | 3650mAh |
OS | パイ 9.0 |
その他 | イヤホンジャック NM カード 防塵防水 IP68 |
価格 (ユーロ) | 約8.6万円 (イートレン) |
カメラ
広角 1600万画素 F2.2
標準 4000万画素 F1.8
望遠 800万画素 F2.4
下位モデルのP30も「広角・標準・望遠」とカメラを3つ備えており、ライカとの共同開発のカメラを使用している。3つの画角を自由に切り替えられる利便性は何ものにも代えがたく、一度この便利さを体験してしまうと、iPhone XRやPixel 3のようなシングル・レンズには戻りたくないと思ってしまう。
メインの4000万画素のカメラは「ピクセル・ビニング」という技術を使い、デフォルトでは1000万画素級の写真に仕上げている。こうすることにより“よりクリアで明るい、色の再現性を向上させる“ことが可能だと言われている。
後述するが、残念なことにメインカメラには光学式手ブレ補正 (OIS)が搭載されていない。
望遠レンズは光学3倍ズームで、高画質のままズームができるハイブリッドズームは5倍まで可能、これは昨年のP20 Proと同じ望遠性能である。
P30 Pro との違い
- 光学5倍ズームの「ペリスコープ・レンズ」ではない (P30は光学3倍ズーム)
- メインのレンズの明るさがP30 ProはF1.6 (P30はF1.8)
- 広角レンズの画素数がP30 Proは2000万画素 (P30は1600万画素)
- P30 Proのメインレンズには光学式手ブレ補正を搭載 (P30にはない)
- P30 Proには第4のカメラとしてToF (Time of Flight)カメラがある (P30にはない)
これら以外にも存在するかもしれないが、基本的にHuaweiは「Proモデルと”普通のモデル”には多少の差」をいつも設けている。
この中で少し残念な点は「P30のメインレンズには光学式手ブレ補正 (OIS)がない」ということである。Huaweiは暗所での撮影能力の高さをアピールしているのにも関わらず、OISををP30には載せなかった。これは多少なりとも暗所性能にマイナスの影響を与えることは必至といえる。
P30 Proとの間には若干の性能差がありつつも、決して「大きく差がある訳ではないし、カメラもライカと共同開発したフラッグシップ用のモノを搭載」しているので、フラッグシップとしてのパフォーマンスは保証できると予想できる。
RYYBセンサー
この「RYYBセンサー」は上位モデルのP30 Proと同じモノを搭載。
4000万画素のメイン・カメラのセンサーは「RYYB (赤1つ・黄2つ・青1つ)」というピクセル配列のセンサーを導入。通常は「RGGB (赤1つ・緑2つ・青1つ)」のピクセル配置がカラーセンサーとしては常識なのだけれど、これを「RYYB」にすることにより、光を最大40%多く取り込むことが可能になった”らしい”。
これにより、暗所や夜景でのカメラ性能を更に向上させると謳っているので、期待してみたいと思う。こうなってくると、OISがないのは何よりも残念である。
処理能力
Kirin 980 & 6/8 GB RAM
P30の構成はP30 Pro (RAM 8GB)よりもRAMが2GB少ない6GBである。一応、P30には8GB版も存在する。
おそらく8GBを積んだP30 Proとの差は「体感でわかる人はほとんどいない」と思え、3Dゲームのアプリを複数開いた場合には「若干の差」が見られるかもしれないが、6GBと8GBの違いを大きく気にする必要はないだろう。
Kirin 980のチップ自体は昨年のMate 20 Proから搭載されているチップであり、Antutuのスコアも30万点を超える優秀なチップなので、処理能力で不満を感じることはないといえる。
ただ、今年のスナップドラゴン855の性能はKirin 980よりもはるかに優秀で、サムスンのギャラクシーS10シリーズがAntutuで35万点を叩き出しているので、Kirin 980の性能については今となってはもう驚くことはない。
スナップドラゴン855、Kirin 980、A12 Bionic との比較
デバイス | スコア |
ギャラクシー S10e スナップドラゴン855 |
約35.8万点 |
iPhone XS (A12 Bionic) |
約35.5万点 |
Huawei Mate 20 (Kirin 980) |
約30.5万点 |
バッテリー関連
3650mAh
6.1インチの画面を考慮すれば、「まあ良好」といった具合だと思う。特別、容量が大きいとはいわないが、十分な容量といえる。
おそらく1日半はもつだろうと思うし、Huaweiのバッテリーライフは非常に優秀なので、もしかすると丸2日もつかもしれない。
急速充電 22.5W / ワイヤレス充電 非対応
P30 Proが40W(ワット)出力という業界最速の充電器を付属させているけれど、P30は22.5Wの充電器に格下げされている。
ただ、22.5Wでも十分に急速充電の部類に入るので、充電スピードには不満はないだろう。むしろ40W出力が異常なくらいである。
残念なことを、P30はワイヤレス充電に非対応という点。困らない人も多いだろうが、ワイヤレス充電信者には辛い点だといえる。
ディスプレイ
OLED 6.1 インチ フルHD+
解像度: 2340 x 1080 (422ppi)
P30にも”OLED (有機EL) ディスプレイ”を採用。Proシリーズ以外でOLEDをが使われるのはこれが初めてで、これまでの経緯を考えるとディスプレイに関してはグレードアップが行われたといえる。
HDR10にも対応しており、HDR動画を楽しむことが可能になっており、ディスプレイは上位モデルと遜色のないスペックだといえる。
スクリーン対ボディ比:85.8 %
P30 Proが採用しているカーブディスプレイとは違い、「フラットスクリーン」を採用している。個人的にはカーブディスプレイは好きではないので、P30のフラットスクリーンの方が好ましい。
そして、フラットスクリーンでありながら、スクリーン対ボディ比は85.8%を実現しているので、この数値も非常にレベルが高い。
デザインはP30 Proとほぼ同じといえ、中央にカメラ用のくり抜きがある。”ノッチデザイン”ではあるものの、iPhoneやMate 20 Proのようなデザインではない。
スピーカー
ドルビーアトモス対応ステレオスピーカー
スピーカーもP30でありながら、ドルビーアトモスのステレオスピーカーに対応している。これも下位モデルながら、「スペックアップ」した点といえ、高評価。
P30はP30 Proと違い「受話口」があるので、そこから音が出る。P30 Proは受話口がなく、ディスプレイを振動させて音を出す仕組みになっており新しい技術は導入されている。
おそらく、ディスプレイ・スピーカーであっても、受話口からのスピーカーであっても現時点では大きな差はないだろうと予測している。
OS:EMUI 9.1 (パイ9.0)
これはいつも書いているのだけれど、EMUIは「好き嫌いが分かれるOS」なので万人受けするOSではない。私は純アンドロイド派なので、Pixelやアンドロイド Oneが好きであるためEMUIはイマイチ好きではない。
その他
イヤホンジャック、micro SD、ワイヤレス充電、防塵防水 IP68
4機能 | P30 Pro |
イヤホン | ○ |
micro SD | X |
ワイヤレス充電 | X |
IP規格 | IP53 |
イヤホンジャックを残してくれているのは重要な点だといえる。イヤホン・ジャックの需要は依然として高く、フラッグシップの下位モデルとはいえ、このクラスのスマホでもまだイヤホン・ジャックが使えるのは高評価といえる。(ちなみにP30 Proにはイヤホンジャックはない)
ワイヤレス充電についてはバッテリー関連のところで説明したように「非対応」となっている。(P30 Proはワイヤレス充電が対応している)
防塵防水のIP規格は「IP53」と水しぶきや濡れた手で操作しても問題ないレベルではあるが、水没には耐えられない。
micro SDには対応していないが、Huawei独自の外部メモリーカード「NMカード」は使える。詳細は下を参考に。
NM (ナノ・メモリー) カード
一応、NM (ナノ・メモリー)カードといって、Huaweiが独自に開発したNano Simと同じ形状の外付けのメモリーカードがあり、それをmicro SDカードの代用として使うことができる。
これにより、完全に外部メモリーが使えないという訳ではないのだが、micro SDカードと比べると、このNMカードはまだ少しばかり高い。
ただ、それでも価格はかなり下がってきており、ほんの2〜3ヶ月前であればアマゾンにて128GBが約1万円弱もしていたけれど、現在では5550円まで値下げしている。
128GBのmicro SDが2750円(サンディスク製)、3480円(サムスン製)と価格ではまだmicro SDには負けるけれど、かなり手の届く範囲にまで下げってはきている。
ディスプレイ指紋認証
P30にも「光学式指紋認証」を採用している。下位モデルのP30にもこの機能を付けてきたことに驚いている。
同じディスプレイ指紋認証でもサムスンのギャラクシーS10、S10+に採用された「超音波式の指紋認証」とは違う。(超音波式の方がグレードが上といわれている)
初めて導入されたMate 20 Proのものから第2世代へ進化しており、そのため、認証精度やスピードもかなり上がっているといわれている。
ただ、昨年、光学式の指紋認証を採用した「Mate 20 ProやOnePlus 6T」などでは、”焼け付き”の問題が起こったこともあり、P30 Proが同様の問題を改善できたのかは時間が経たないとわからない。
2D顔認証
インカメだけでロックを解除する2D認証になっている。これは前機種のP20 Proと同様のやり方であり、セキュリティ面には不安は残るけれど、便利であることは否定できない。
重さ:165g
P30 Proの6.47インチと比べたら、6.1インチは小ぶりに感じるけれど、このサイズでもある程度大きいスマホだといえる。そのため、重さが165gというのは比較的軽いといえる。
価格
8万5900円 (8GB RAM / 128GB) (海外通販サイト:イートレン)
上の価格は海外通販サイト:イートレンの現時点でのもので、8GB RAM版であるので少し価格が高いといえる。おそらく6GB版も今後発売されるので、そのモデルはもう少し価格が下がるだろう。
現時点で、この8.6万円という価格は「非常に高額」でコストパフォーマンスはかなり悪いと思う。その理由はサムスンのギャラクシーS10が同じイートレンのサイトで9万1400円で売られていることから、5500円を足せば「スペックに妥協など一切ないS10」が買えてしまう。
そう考えると、この価格ではP30は苦戦を強いられるだろう。おそらく、ある程度時間が経つと価格が下げられるだろう。
<最新の価格は以下より>(どちらも非常に有名な海外通販サイトです)
日本での発売は?
例年通りであればHuaweiは日本でもP30を公式販売するだろうと予測できる。日本での販売価格は比較的は安くなる傾向があるので、8万円台をきってくるのか期待したところだが、こればかりは待つしかない。
まとめ
P30はどうしても注目度の高いP30 Proの影に隠れることになり、スポットライトが当たりづらいが、下位モデルながらP30のフラッグシップとしての能力は高い。
カメラは「広角・標準・望遠」と3つの画角に対応しているので実用性に富み、広角レンズは非常に便利であるし、望遠も光学3倍ズーム、5倍ハイブリッドズームと昨年のP20と遜色のない望遠スペックである。
ディスプレイは初めてOLED(有機EL)ディスプレイになりグレードアップしているし、スピーカーもドルビーアトモス対応のステレオスピーカーである。バッテリーのパフォーマンスもおそらく良好だと予想できる。そして処理能力も 「Kirin 980 & 6GB RAM」と十分なパワーがある。
その他、イヤホンジャック、ディスプレイ指紋認証、NMカード対応、となかなかの装備といえる。
しかしながら、価格が約8.6万円 (イートレン)とスペックに対して相当高額なので、この価格でサムスンのギャラクシーS10などと張り合っていけるのかと心配になるくらいである。
言わずもがな、コストパフォーマンスはこの価格では良くないと言わざるを得ない。
P30が日本での公式価格が下がることを期待しつつ、日本発売を待ちましょう。