ようやく「LG G7」が韓国のソウルやニューヨークなどで公式発表された。正式名称は「LG G7 ThinQ」という名前。
ThinQ (読み方:シンキュー)というのはLGのAI関連のブランド戦略みたいなモノで、これについては詳しく知っておく必要はないと思うので、今回の記事内では「LG G7」と書いていきたい。
紆余曲折あり、赤字続きのLGスマホ部門がG7の開発を一旦中止という話も噂されたけれど、今回もLGはきっちりと“なかなかのモノ”を送り出してきたといえる。LGのスマホはいつも一定の評価はされているので、やはり長年スマホを作ってきたメーカーの実力を感じる。
サムネイル画像と以下の画像はLG Mobile GlobalのYouTube動画よりスクリーンキャプチャ
主なスペック & 価格予想(未発表)
チップ | スナップドラゴン845 |
RAM | 4GB / 6GB |
容量 | 64 GB (4GB RAM版) 128 GB (6GB RAM 版) |
ディスプレイ | IPS LCD 6.1インチ 解像度: QHD+ (2K+) 1440 x 3120 (564ppi) 19.5:9 (アスペクト比) 82.6% (スクリーン対ボディ比) |
カメラ | 背面:標準 1600万画素 F1.6 (OIS) ワイド 1600万画素 F1.9 インカメラ:800万画素 F1.9 |
バッテリー | 3000 mAh |
OS | オレオ 8.0 |
その他 | Quad DAC イヤホン・ジャック(端子) 防水防塵 IP68 micro SD対応 |
価格予想 | 約US$750 (約8万2千円) |
処理能力:スナップドラゴン845 & 4〜6GB RAM
RAM 6GB版は韓国のみの販売か
G7にはRAMが4GBと6GBの2つのモデルがある。まだ公式では確定していないが、6GB版は韓国のみの販売か少数の地域のみでしか手に入らないと言われており、基本のスタンダード・モデルはRAM 4GB版と言われている。
チップのスナップドラゴン845は2018年のほぼ全てのアンドロイド・フラッグシップ機に搭載されるチップなので、これがG7に搭載されるのは当然なので、驚きはない。
4GB RAMはちょっとさみしい
長期的な使用(2年以上)を考えると4GBは少し物足りないと感じる。ミドルレンジ・スマホでさへも4GB RAMを積んでいる2018年、フラッグシップ機が4GB RAMなのは正直なところ残念ではある。
しかしながら、4GB版でも多くのユーザーには不満もなく使えるパフォーマンスがあると思うし、6GB版と大差ないパフォーマンスかもしれない。それでも6GB版の方が安心して長期的に使えると思っている。
さはさりながら、フラッグシップ機の料金を払ってまで4GB RAMはなんとなく残念ではあると感じる。
カメラ:標準 1600万画素 F1.6 & 広角 1600万画素 F1.9
「標準レンズ + 広角レンズ」という組み合わせはLGがディアル・レンズを採用して以来、長年採用してきた構成で、フラッグシップ機としては唯一と言っていいほど“広角レンズ”に特化してきた。
この広角レンズはLG最大の武器で、マニア層でもこのレンズを圧倒的に支持している人がほとんどで、最も評判の良い“サブ・カメラ”だといえる。
LGの写真や動画の特徴として、かなり彩度(Saturation)が強い傾向がある。G7がどういった描写をするのかはまだ判断できないが、恐らく今まで通りの傾向を受け継ぐと思う。これはレビュー時に他の機種と比べてみたいと思う。
動画の手ぶれ補正は改善されてきた
レビュー時に深く掘り下げる予定ではあるが、現時点でフルHDでの動画撮影はかなり手ぶれ補正が改善されたように感じる。
LGはサムスンやグーグル・Pixel2、iPhone Xなどに比べると動画の手ぶれ補正が少し劣っていたのでどこまで改善されたかを注目したい。
ただし、フルHDでの撮影では光学式手ぶれ補正が効いているけれど、4K撮影では手ぶれ補正は“ない”のでブレブレの撮影になる模様。
広角レンズは最早サブ・カメラではない
今回、標準レンズと同じセンサーを搭載してきた。これは標準レンズと同等に扱われているという証拠である。
今回、この広角レンズに若干変更があり、V30までは下の写真のように120度であった。これがG7では107度とアングルが狭まった。
LGジャパン公式サイトよりスクリーンキャプチャ: http://www.lg.com/jp/mobile-phone/lg-L-01K
従来より写真に写る範囲が狭まり一瞬がっかりするかもしれないが、広角すぎると写真や動画が歪曲してしまう現象がどうしても起きてしまう。上の写真でもワイド・アングルの写真が建物が直線的でないのがよくわかると思う。画角を狭めると、この歪みが矯正されるので写真自体は撮りやすくなる。
さらに、広角すぎると逆に撮影が難しくなることもある。LGの広角レンズは評判が良いのは百も承知ではあるけれど、一般的に“超広角レンズ”のように、ある一定のラインから広角になればなるほど、撮影技術が必要になってくる。
超広角レンズの特徴を活かせる知識がある人ならいいけれど、私のように少々カメラが好き、という程度の人間では超広角になると難しいときも多く、なんとなくではあるけれど、120度よりも107度の方が“素人の”撮影には向いている“かも”しれない。
AI Cam
AI + Camera = AI Cam ということで、LGも他のアンドロイド機同様にAIを宣伝しまくっている。18種類ほどシーン別にAIが被写体や撮影条件を理解し、それらに合わせて最適なモードで写真や動画を撮影できる。
これは今年のトレンドになるもので、Huaweiが先駆けて行っていることとほとんど同じといえる。HuaweiはAIが1つのシーンに最適化するのに対し、LGのAI Camは下の画像のように「Long-hair」「Sun Glasses」などと1つの写真の中に複数のシーンを識別できる。
例えば、人物が立っていて、その人がお花を持っていれば、「人物 + 花」というようにAIは2つのシーンを理解することになる。ただし、AIが複数のモノや条件を理解していることが必ずしも「最良の写真や動画」のクオリティーを生み出すことができるかはまだわからない。
スーパー・ブライト・モード
1600万画素 → 400万画素 で撮影
これは、暗所での撮影で光が足りないときに起動される機能で、1600万画素のセンサーを400万画素に“落として”撮影する。恐らくソフトウェア処理で400万画素まで落としていると考えている。これで暗所でもより明るい写真や動画を撮ることに適した設定で撮影できる。
カメラに詳しい人なら、ふむふむと納得するかもしれないけれど、わからない人のために簡単な解説を入れたい。
なぜ400万画素の方が暗所での撮影に有利になるのか
まず、写真や動画のクオリティーというのは「高画素=高画質」ではないということを知って頂きたい。高画素であればあるほど、より高精細な写真・動画が撮れるけれど、暗いところではこれが不利になるという性質がカメラには存在する。
「1600万画素 → 400万画素」 高画素から低画素へ変更することにより、暗所での撮影がしやすくなる。低画素により精細さは失われるものの、より明るく、ノイズの少ない写真や動画が撮れる。
暗所の場合は精細さよりも、明るさやノイズ軽減の方が重要視され、見た目はこちらの方が“キレイ”に見える。
なぜこういうコトが起こるのか論理的に理解したい方はこちらのリンクをどうぞ。
画素数とは?メリットデメリットを語る。高画素数カメラ=買いでは無いよという話
このスーパー・ブライト・モードがどこまで暗所撮影に好影響を与えるのかはレビューする時に判断したい。ちなみにこの機能とほとんど同じモノがHuawei P20 Proでも「ライト・フュージョン」という名前で使われている。
ディスプレイ:LCDパネルとしては最高峰か
6.1インチ QHD+(2K+)の解像度 “スーパー・ブライト・ディスプレイ”
G7の液晶パネルはLGが開発した「MLCD+」という最高峰のパネルを採用している。この次世代LCDパネルは従来のLCDパネルに比べ、“より明るく”そして“従来のディスプレイと同じ明るさを省エネで実現”することが可能。
MLCD+のパネルは、有機ELパネル並みの「画質と省エネ」ともいわれている。さらに2018年のiPhoneにも採用されるのではという噂もあるほど。
その他、有機ELパネルに比べコストが低く済む点や、有機ELパネルよりもLCDパネルは画面焼けし辛いので、LCDを使う利点はいろいろとある。
解像度の変更が可能
Low (HD+) → Medium (フルHD+) → High (2K+)
ディスプレイに関して私が最も嬉しかった点がここで、今までGシリーズでは解像度の変更ができなかった。人にもよるが、私はスマホのような小さい画面サイズであれば解像度がQHD+(2K+)も必要とは思っておらず、フルHD+で十分と思っている。
フルHD+の解像度に下げればバッテリーの保ちも良くなるので、解像度の選択ができるのは非常に素晴らしい。
高輝度(最大1000ニット)
MLCD+パネルにより、3分間1000ニットの明るさを保つことができる。1000ニットってどれくらいと感じるかもしれないが、屋内で1000ニットまで明るさを上げると眩(まぶ)しくて画面を見てられないくらい。
外での使用でも1000ニットも必要ではないと思うけれど、まあこれはMLCD+のパネル性能のアピールでしょう。
スピーカー:ブームボックス(Boombox) スピーカー
現在フラッグシップ機はステレオ・スピーカーが大前提の時代。しかし、G7のスピーカーは未だに「モノラル・スピーカー」と一瞬がっかりしてしまう仕様に思えるが、LGはスピーカーにも手を抜いておらず、新しい道を開拓してきたといえる。
それが「ブームボックス・スピーカー」。なぜ新しい道かというと、ブームボックスという新しい技術は、スマホ全体を反響させて音を作り出す仕組み。モノラル・スピーカーながら非常にレベルの高い音質を出すという評判がある。
更に、箱や机などの上に直に置いて音を鳴らすとスマホ全体を使って音を鳴らすので、その振動が箱に伝わりより質の高い音を作り出すことが可能。下の動画を見て頂ければ、その効果が良く分かると思う。
不人気のノッチ・デザイン
ユーザーのフィードバックを大切にするLGにしては珍しくそれに背くデザインといえる。なぜかというと、ノッチ・デザインは“否定派”が非常に多く、私のように“気にしない派”でさへもマイノリティで、“肯定派”に至ってはかなり少ないと思う。
ノッチ・デザインを隠すことは可能
下の動画を20秒ほど見てもらえればすぐにわかるので是非。
LGは否定派に配慮してノッチ・デザインを目立たなくすることを可能にしている。これはHuawei P20シリーズと同じようなデザインで、上の動画のようにノッチの両翼を黒く見えづらくすることが可能。
容量:64GB / 128GB + micro SD
スタンダードの「4GB RAM + 64GB」でもSDカードが挿せるので非常に便利。私はこのmicro SDが挿せるかどうかは非常に重要視しているので好印象。
バッテリー容量:3000mAhは少し不安
今回、私が最も心配している点は、ちょっと小さすぎるのではないかと感じるバッテリー容量。6.1インチの大画面に3000mAhというバッテリー容量は、いくらバッテリー持ちが評判の良いLGといえども少なすぎるのではないかと思う。
特に、似たような大きさのHuawei P20 Proが4000mAhもの大容量バッテリーを搭載している点を考えればちょっと少なすぎると感じずにはいられない。
イヤホン・ジャック:32bit Quad(クアッド) DAC
もはやフラッグシップ機には珍しい存在になってしまったイヤホン・ジャック。iPhoneを筆頭に廃止の流れが押し寄せる中、逆にイヤホン・ジャックに力を入れているのがLG。
イヤホン・ジャックとしては最高クラスのQuad(クアッド) DACを採用し、最も良質なイヤホン体験が可能。
グーグル・アシスタント専用ボタン
LGは今回、グーグル・アシスタント専用のボタンを配置。場所は下の写真を見てもらえればと思う。サムスンのBixbyボタンと違い、この機能がひどく否定されることもなく、マニア層では受け入れられている。
個人的にそれほどグーグル・アシスタントを使う頻度は多くないので、あまり重要ではないのだけれど、まあどういう評価に繋がるのかはレビューまでお待ち下さい。
OS:オレオ8.0
最新のオレオ8.1を期待していたけれど残念ながら8.0。LGはソフトウェア・アップデートが致命的に遅いので8.0なのも仕方がないけれど、いい加減このアップデートの遅さは克服してもらいたい。
価格:未発表 (うわさではUS$750)
G7の価格はイベントでは発表されなかった。5月に発表にも関わらず公式に価格がわからないのはいかがなものかと思う。一応、うわさではUS$750(約8万2千円)くらいになるのではといわれている。
ただし、この価格は微妙なラインで、その理由は下の表を見てもらえればわかりやすい。
iPhone 8 | 7万8800円 |
ギャラクシー S9 | 720ドル(7万9千円) |
G7 | 750ドル(8万2千円) |
もし、この価格になるとライバル機と真っ向勝負になってしまう。正直、こうなってしまうとLGとしてはアップルやサムスンにはブランド力で劣ってしまうため負けてしまうと思われる。まあ公式価格ではないので現状はなんとも言えない。
一つだけ付け加えておくと、LGのスマホは半年程たつと価格がかなり下落するので、あまり価格設定は重要ではないのかもしれないとも思っている。
まとめ
LGのスマホ自体は毎回非常に出来の良いモノである。今回のG7は不人気のノッチ・デザインと3000mAhの少ないバッテリー容量以外は致命的な点はない。
進化し続けるデュアルレンズ・カメラ(標準+広角)、MLCD+ディスプレイ、ブームボックス・スピーカー、Quad DACのイヤホン・ジャック、micro SD対応、防水防塵の最高クラス・IP68、そしてワイヤレス充電(アメリカ版のみ)。
細かい点にも配慮しており、十分に他社と勝負できるスペックといえる。しかしながら、他社よりも発表が遅れた点と価格が未発表な点があるので不安は残るのも事実。
いずれレビューしたいと思う。日本でGシリーズが発売されたことはまだないのだけれど、V30シリーズが販売されたことからもしかしたらG7 ThinQが日本に上陸されるかもしれないので注目していきたい。