「LG G8 ThinQ」の発表後の感想をまとめていきたい。
スペックは2019年のフラッグシップとしては「標準的」ではあるけれど、ZカメラというToFカメラを使ったジェスチャー機能や、ディスプレイを振動させて音を出すという機能などを導入してきている。
ただ、実際にはこういった機能にどこまで有用性があるのかは全くの未知数だが、面白みのある試みだと思う。
それではいろいろと思うことがあるので、詳しくみてまいりましょう。
アイキャッチ画像、記事内画像はLG Mobileアメリカ公式サイトよりスクリーンキャプチャ:https://www.lg.com/us/mobile-phones/g8-thinq
主なスペック & 公式価格 (不明)
チップ | スナップドラゴン 855 |
RAM | 6 GB |
容量 | 128 GB |
画面 | OLED 6.1 インチ 解像度: QHD+ 3120 x 1440 (563ppi) 19.5:9 (アスペクト比) 83.5% (スクリーン対ボディ比) |
カメラ | 背面: 広角 1600万画素 F1.9 標準 1200万画素 F1.6 (OIS) インカメラ: 標準 800万画素 F1.7 ToF カメラ |
バッテリー | 3500 mAh |
OS | 9.0 パイ |
その他 | イヤホンジャック micro SD (〜512GB) ワイヤレス充電 IP68 |
公式価格 | 不明 |
公式動画
カメラ
広角 1600万画素 F1.9
標準 1200万画素 F1.6
G8は今までのGシリーズ同様に「広角・標準」のデュアルレンズ構成である。同時期に発表している、サムスンのS10シリーズやソニーのXperia 1が「広角・標準・望遠」のトリプル・レンズを採用しているので、これらと比べると少し残念な感じがするのは否めない。
ただ、ひとつ言えることは望遠レンズというのはメインの標準レンズや融通の利く広角レンズに比べ出番が非常に少ないので、望遠レンズがないからといって大きく困るというシチュエーションはあまりないだろう。
しかしながら、望遠レンズもあるに越したことはないのも事実なので、やはり望遠レンズは付けてほしかったというのが本音である。
インカメ: Zカメラ (ToF カメラ)
インカメラで注目されているのが、ZカメラというToF (Time of Flight)カメラ。「TOF?」なにそれ?と思う方がほとんどだろうし、私もHuaweiのHonor View20が発表されるまで、全く知らなかった。
変に説明を入れるよりも↓の動画を見てもらえればわかりやすいです。(約3分)
ToFとは、被写体に照射した赤外線が反射してくる時間を計測することで、被写体との距離を計測する技術。3次元で被写体認識ができ、高精度な顔認証が行えるほか、ARやVRにも最適だとしています。
引用元:engadget 「iPhoneよりも高精度な顔認証を。LGが新スマホ G8 ThinQにToF式フロントカメラ採用」より
ということで、もうすでに「B2B (企業間)市場」などでは結構前から導入されている有名な技術で、「Xbox One世代のKinect」(engadgetより)でも使われていたそうなので、既存の技術をスマホカメラへ応用し「さらなるカメラ性能の向上」につなげるのでしょう。
3D 顔認証
すでに上で書いたけれど、このZカメラ (ToF カメラ)を使って、3D顔認証が可能。3Dであるため2Dよりもセキュリティは相当向上する。
3D 空間認識
Zカメラ (ToF カメラ)のお陰で自撮り(セルフィー)の際に、被写体と背後の空間を3Dで見分けることが可能になったので、より精度の高い「ポートレート写真」を撮ることができる。
個人的に、セルフィーなど滅多に撮ることはないので、あまり重要ではないけれど、これは面白い技術だと思っている。
Hand (ハンド) ID
Zカメラ (ToF カメラ)を使ってなんと「手の静脈や手のシワ(手相)」を認識することが可能になり、G8に手をかざすとG8のロックを解除できる。しかも、このHand IDは指紋認証よりもセキュリティが高いのだそう。
Air Motion (エアーモーション)
上の動画を見る限り、今のところ3つのジェスチャーを認識できるそう。
- スクリーンショット
- アプリを開けるショートカット
- 音のボリュームの上げ下げ
正直なところ、このAir Motion (エアー モーション)は現実的には大して重要ではないだろうし、最終的には使うことはなさそうに感じる。
だがしかし、なんとなくこういうジェスチャー認識というのはオタク心をくすぐるもので、近未来映画「マイノリティ・リポート」でトム・クルーズがジェスチャーを彷彿とさせる。
もうちょっと新しい映画だと「アイアンマン」のロバート・ダウニーJrのシーンなんかもAir Motionが超絶進化したバージョンだと思えてくる。
さはさりながら、おそらくこのAir Motionは全く使わない機能のような気がする。
処理能力
スナップドラゴン855 & 6GB RAM
処理能力は2019年のフラッグシップとしては「スタンダード」だといえる。スナップドラゴン855は2019年のほぼ全てのフラッグシップに搭載されるチップで、これは何の問題もないのだが、RAMが6GBなのはちょっと残念である。
その理由はライバルのサムスンがギャラクシーS10、S10+に8GB RAMを載せているからであり、それらと比べると見劣りするのは否定できない。
ただ現状6GBでも十分に余裕があるといわれているため、6GBと8GBの差というのはよっぽどの重い作業をしていない限りわからないだろう。(これは同じRAM容量が6GBのXperia 1の発表のときにも書いた)
個人的な予想としては2年後の2021年でも6GB RAMもあれば問題なくアンドロイドOSは動作するだろうと思っている。
スナップドラゴン855自体は前評判通り非常に良いチップで、今はiPhone XSシリーズ、XRに搭載されている「A12 Bionic」というチップがAntutuなどのベンチマーク系のアプリでぶっちぎりの最高値を叩き出しているけれど、「スナップドラゴン855」はこのA12 Bionicに匹敵する実力があると言われている。
スナップドラゴン855のについてはこちらの記事を → 【 スナップドラゴン855 】は噂通りの高性能チップ
「スナップドラゴン 855のリファレンス機のスコアは↓」
iPhone XS、2018年アンドロイド・フラッグシップとの比較
デバイス | スコア |
リファレンス機 スナップドラゴン855 |
36万0444点 |
iPhone XS | 35万5856点 |
Huawei Mate 20 | 30万6608点 |
ROG Phone | 29万6726点 |
バッテリー関連
3500 mAh (6.1インチ)
6.1インチの画面サイズを考えれば3500mAhは良好なバッテリー容量かなといえる。ただ、決して大容量とまではいえないということは書いておきたい。
スナップドラゴン855のチップとの組み合わせであれば、1日は余裕でもつだろうけれど、丸2日持ちこたえられるかはわからない。
急速充電:18W / ワイヤレス充電
充電は18W(ワット)出力なので、そこそこ急速といえ、ワイヤレス充電にも対応。ワイヤレス充電がサムスンのS10シリーズのように15Wというような急速ワイヤレス充電にまで対応しているかは不明。おそらくそうではないと予想。
ディスプレイ
OLED 6.1 インチ QHD+ HDR
解像度: 3120 x 1440 (563ppi)
Gシリーズでは初めてOLED(有機EL)ディスプレイが搭載された。従来ではLCDパネルを採用しており、LCDパネルながら高品質の画質を実現していたけれど、ようやくワンランク上のOLEDへとグレードアップした形となる。
LGのOLEDディスプレイは2017年のV30やPixel 2のときに採用されたのだが、その時ブルーシフト現象が起こり非常に評判が悪かった。2018年ではその問題をしっかり解決しているので、おそらくG8では何の問題もないハズである。
解像度はQHD+と十分すぎる高解像度といえる。個人的にはフルHD+の解像度に落として使うのがベストだとは思っている。
HDRの対応についてだが、現時点でLGモバイルの公式サイトにスペック表が載っていないため正確にはわからないのだが、「HDR10とDolby Vision」両方に対応しているという情報があるので、HDR動画を堪能できるハズである。
スクリーン対ボディ比:83.5 %
前機種のG7同様にノッチデザインを採用しているものの、数値としては特別高いとまでは思わない。ただ、必要最低限のベゼルレス化であるといえる。
スピーカー
DTS: X対応 ステレオスピーカー
メインのスピーカーは底面にあり、LGがアピールする「Boomboxスピーカー」を継承している。これはスマホ全体を反響させて音を作り出しておりレベルの高い音質を出すという技術。
DTS: Xというのは「ドルビーアトモス」に似た機能でスピーカーに臨場感のあるサウンドを作り出すことができる。
そして、一番注目されているのが受話口がない点である。
スピーカー・スクリーン
受話口がないためどうやって相手の電話の声が聞こえるのか?というと、ディスプレイを振動させてスピーカーとして利用している点。
これがどこまでの「音量」を出すのかまではわからないけれど、面白い試みだとは思う。
OS (9.0 パイ)
OSは9.0のパイ。LGのOSはあまり評判が良くない。OSに関しては大きな変化があるようにはいわれていないので、今回もあまり評判は良くないだろうと予想。
その他
イヤホンジャック、micro SD、ワイヤレス充電、防塵防水 IP68
4機能 | LG G8 |
イヤホン | ○ |
micro SD | ○ |
ワイヤレス充電 | ○ |
IP規格 | IP68 |
ここはさすがLGだといえる。イヤホン・ジャックも高品質のものを採用しているので、プラス材料といえる。
本体容量が128GBもあるので、micro SDが必要かはわからないけれど、無いよりは断然あったほうが便利。
その他、ワイヤレス充電、IP68と防塵防水に対応。
3D顔認証 & 背面指紋認証
Zカメラ (ToFカメラ)のところで紹介したけれど、このカメラのお陰でセキュリティの高い3D顔認証を行うことが可能。ToFカメラの精度は非常に高いといわれているので、おそらく高いパフォーマンスを発揮するだろう。
背面指紋認証もついており、個人的には「顔認証と背面指紋認証」の組み合わせはベストと思っているのでこれは素晴らしいと思う。
重さ:167g
6.1インチのスマホとしては比較的軽い部類に入ると思う。2019年のフラッグシップを見てきて思うのは意外と軽量化が進んでいるということ。これは地味ながら好印象。
Googleアシスタント専用ボタン
昨年のG7から導入された、このGoogleアシスタント専用ボタン。サイドについており、そこそこ評判が良く、G8にも引き続き採用されている。
価格 (韓国公式価格)
89万7600ウォン (約8万8200円)
韓国では予約がはじまっており、その際の価格が上の89万7600ウォン (約8万8200円)。これを見て思うのは、8.8万円は今年のフラッグシップとしては相応の価格だと思う。コスパが良い価格とは思わないが、決して無駄に高いとは思わない。
ただLGの場合は他のライバル勢と同じ価格帯だと「選ばれない」ことが多いので、売れるかどうかわからない。ただでさえLGにとってモバイル部門は赤字を垂れ流している部門なので本当は是が非でも売りまくるべきだとは思うのだが・・・
そしてもう一つ書いて置きたいのは「LGのスマホは値崩れしやすい」ので、LG G8をすぐに購入するのはオススメできない。数ヶ月もすれば今よりもかなり価格が下がってくると思うので、それまでは購入は控えたほうお得だといえる。
国内販売はないか?
おそらくではあるが、G8が日本で公式販売されることはないだろうと予想している。その理由はGシリーズはこれまで一度も日本では販売されていないはずで、G8もそれと同様の販路になるだろうと思う。
なので、海外通販サイトを利用して個人輸入をするしかない。私がオススメしているのは有名どころの「イートレンやエクスパンシス」で、そちらで在庫や価格の確認をするのが良いだろう。
まとめ
LG G8はデザイン的には昨年のG7からは大きな変化は少ないが、Zカメラ (ToFカメラ)を採用し、ジェスチャーで操作ができたり、3D顔認証、ハンドIDという新しい方法のロック解除も導入してきた。
その他、おもしろい機能としては受話口がなく、その代りにスピーカー・スクリーンというディスプレイを振動させて音を出すという機能もおもしろい。
ただ、これらの新しい技術が実用的で有効な手段になるのかまでは未知数なので、今後どうなっていくかを期待したい。
上記以外では、「デュアル・レンズ・カメラ(広角+標準)、スナップドラゴン855、RAM 6GB、OLED(有機EL)ディスプレイ、Boomboxスピーカー」などフラッグシップとしての必須条件はしっかりと備えている。
それだけでなく、バッテリーも3500mAhと大容量とまではいわないが必要十分であるし、イヤホン・ジャック、ワイヤレス充電、micro SD対応、IP68と細かい点にも抜かりはなく、この辺はさすがLGといえる。
価格は韓国では89万7600ウォン (約8万8200円)で、やはりそれ相応の価格ではある。ただ、LGのスマホの価格は下落しやすいので、今後の動向をうかがっていきたい。
全体的には総合力は高い1台だと思うのだが、なんとなくインパクトに欠けるとも感じている。その理由はZカメラを使ったジェスチャーやハンドIDなどの機能が期待はしつつも、「あまり実用では使うことがなさそう」なイメージがあるからかもしれない。
こういったことは時間が経つと評価がわかるので、期待をしつつ見守りましょう。