LG V30が日本では「V30+」という名称発売されることになり少々驚いている。昨年は日本版LG V20 Proというものがドコモから発売されたけれど、あれでは本来のVシリーズの意味がないと思っていた。今回はグローバル版と同じものがauとドコモから発売ということで、日本のスマホ市場がより競争が激しくなるのは良いことだと感じる。今記事ではV30と表記しています(V30+と同じ意味です)。
単刀直入な感想
V30は良くも悪くもファブレットのオールラウンダーといえる。2017年の後半に発売されたフラッグシップ機として、必要なものはほとんど兼ね備えている。デュアルレンズ(標準 F1.6 + 超広角 F1.9)、ベゼルレス・デザイン、6.0インチ・有機ELパネル(OLED)、最高クラスのバッテリー駆動時間、高品質イヤホン・ジャック(Quad DAC)、防水IP68、耐衝撃性のミリタリー・スタンダード810Gもクリアー、顔認証ロック解除も備えている。細かい点までユーザーの希望に叶った製品になっている。
ただし、オールラウンダー故に、カメラ性能やソフトウェア面、OLEDスクリーンの出来、スピーカー、RAMなどに少し不安の残る結果となっているのも事実。
何かに秀でているという訳ではないけれど、抜け目のない優秀なファブレットというのが私の感想。それでは細かい点を見てまいりましょう。
主なスペック
画面サイズ | 6.0インチ OLED (2880 x 1440) QHD+ (2K) 537 ppi |
SoC | Snapdragon 835 |
RAM(メモリ) | 4 GB |
容量 | 128 GB 外付けmicro SD可 (256 GBまで) |
カメラ | 背面: 標準レンズ 1600万画素 F1.6 光学式手ぶれ補正OIS
ワイドレンズ 1300万画素 F1.9 インカメラ: 500万画素 F2.2 |
バッテリー | 3300 mAh |
良い点
デュアルレンズ・カメラの理想:標準 + 超広角
LGジャパン公式サイトよりスクリーンキャプチャ: http://www.lg.com/jp/mobile-phone/lg-L-01K
超広角レンズに力を入れる唯一のスマホ
フラッグシップ機で超広角レンズを採用しているのはLGのみで、私だけでなく多くのアンドロイド・ファンはこの超広角レンズを気に入っている。LGもそれをわかっているのか、この超広角レンズに力を入れており、春先に発売したG6の超広角レンズよりもV30の超広角レンズは更に性能が向上している。
まず超広角のF値が1.9とかなり明るくなっている。G6のそれはF値2.4であったので、これは非常に驚いた点。超広角レンズ特有の歪曲現象も30%改善している。
この超広角レンズの実用性は抜群で、アンドロイド・ファンからの支持も根強い。なぜ実用性が抜群なのかというと、今見た景色や被写体を「こう撮りたい」と思ったときに、思ったとおり「こう」いう画角になるのがこの超広角レンズの素晴らしさといえる。人間の目は視野が広く、普段我々が見ている感覚をカメラのレンズで捉えようとするとこの超広角レンズが丁度いい“あんばい”になる。なので私はこのワイドレンズを重宝している。写真を撮っているとわかると思うけれど、人間は近づくことが得意ではあるけれど、引いてとるということをあまりしない。
その他、これ以上後ろにさがれないという条件の場合もこの超広角レンズであれば、普通のスマホでは撮れない写真を撮ることが可能なので、超広角レンズはLGにしか出来ない写真や動画を撮ることが可能になる。
メインレンズは十分な出来
いろいろとだらだら書くよりも比較動画を見てもらったほうが手っ取り早いので、下の動画を見てもらいたい。一つはギャラクシーNote8との比較。もう一つはギャラクシーS8とiPhone Xとの比較。
“Galaxy Note 8 vs LG V30 Full Camera Comparison!”
“iPhone X vs Samsung S8 vs LG V30 CAMERA Test Comparison (4K)”
総合的にみて、iPhone XとギャラクシーNote8の方がV30よりも写真と動画の両方で優れているとは思う。ただし、その差は僅かであって、悲観するほどではない。ちなみにグーグルPixel2、iPhone X、Note8のカメラ性能はスマホ界のトップ3と私は判断しているので、V30のカメラ性能はこの3つに比べるとほんの少し劣るだけと思ってもらって構わない。つまり十分に良い出来。
玄人好みのマニュアル設定
LGは写真・動画ともにマニュアルで細かな設定が可能。カメラをやっている人ならば、簡単にシャッター・スピード、ISO感度、ホワイト・バランス、焦点距離を設定できる。しかもこの設定は写真だけでなく動画でも可能。
オートよりもマニュアルで撮りたい玄人にとってはこういった選択肢はありがたいもの。特に暗所での撮影は、オートよりも、マニュアルで設定した方がキレイに撮れることがほとんどなので、マニュアル設定が充実しているのは重要。
ベゼルレス・デザイン & 6.0インチ有機ELディスプレイ
LG USAよりスクリーンショット: https://www.lg.com/us/mobile-phones/v30
2017年のフラッグシップ機としてベゼルレス・デザインは必須、スクリーン対ボディ比率は81.2%と合格点。この記事を書いている2018年では、ベゼルレス・デザインなどあまり驚かない。
それよりも、LGが遂にLCD IPS液晶からP-OLEDという有機ELパネルを採用し、いよいよOLEDを搭載してきたのが面白いところ。スマホ用のOLEDはサムスンの独擅場であるけれど、LGもそこへ参入してきたということは今後もこの競争が楽しみになる。
OLEDの特徴
- ハイコントラスト(暗い部分と明るい部分の差)
- 黒の濃淡
- 高彩度(色がより鮮やか)
- 省電力
LGジャパン公式サイトよりスクリーンキャプチャ: http://www.lg.com/jp/mobile-phone/lg-L-01K
もちろん、有機ELパネル特有の弱点もあるにはあるけれど、フラッグシップ機は今後はOLEDが主流になるのは明らかで、LGもOLEDをV30に投入し、QHD+ (2K+)という高画質の美しいスクリーンをスマホで見れるのは良い点。
OLED採用により解像度を下げることが可能に
人にもよるだろうけれど、私は6インチ程度であればQHD+という超高画質な解像度は不要と考えている。個人的にスマホサイズであればフルHDで十分なので解像度を下げて、バッテリーを長持ちさせたい派。
有機ELパネルは解像度を下げることができるので、この点は嬉しい。
バッテリー駆動時間はフラッグシップ機ナンバーワン
V30の発表時、6インチの画面に3300mAhのバッテリー容量は少ないのではないかと疑念を抱いたけれど、それは間違っていた。V30のバッテリー駆動時間は2017年のすべてのフラッグシップ機の中でベストだということがわかったから。気になる方は下の動画をどうぞ。
動画の内容は「Razer Phone vs iPhone X vs Note 8 vs OnePlus 5T vs Pixel 2 XL vs V30 vs S8+ – Battery Drain Test!」ということで、主要なフラッグシップ機はほぼ揃っている。
動画を見てもらえればわかるけれど、この機種の中で最後までバッテリーが切れなかったのがV30。これ以上の説明は不要だと思う。バッテリーに関しては文句なしの100点を与えられる。
しかも、動画ではQHD+(2K+)の解像度で輝度がMAXまで上げられているので、解像度をフルHDにまで下げ、輝度を30〜50%くらいまで下げればさらにバッテリー時間は伸びる。私はバッテリーを重要視しているのでV30のバッテリー駆動時間は素晴らしいの一言につきる。
その他、良い点
Hi-Fi Quad DAC
LGジャパン公式サイトよりスクリーンキャプチャ: http://www.lg.com/jp/mobile-phone/lg-L-01K
イヤホン・ジャック廃止の流れが主流になりつつあるスマホ界。それに逆らうかのごとく、イヤホン・ジャックに力を入れているのがLG。Quad DACはアンドロイド・ファンの中では有名な存在。
LG曰く「原音に忠実なサウンドを追求するB&O PLAYのアコースティックエンジニアの哲学が反映されており、ナチュラルでバランスのとれた上質の音楽体験を提供」。このイヤホン・ジャックは世間ではすこぶる評判が良い。
私はあまり音響関連に詳しくないので詳しく語れないけれど、ハイエンドのイヤホンやヘッドホンを使用して音楽鑑賞が好きな方には重宝されると思う。
防水IP68 と ミリタリー・スタンダード 810-G認定の堅牢性
防水はフラッグシップ機としては当たり前になっているけれど、防水性の中でも最高クラスのIP68を取得。ちなみにiPhoneはIP67でワンランク下。
堅牢性もミリタリー・スタンダードの認定を受けており耐衝撃性や耐振動性にも優れているのは保証されている。ミリタリー・スタンダードの認証を受けているスマホは少なく、私の知る限りではLGの端末しかこの認証はされていないと記憶している。ただし、この認証はどこまで実用性に伴うのかはわからないけれど。
スナップドラゴン835 & 4GB RAM & 128GB(micro SD可)
2017年後半のフラッグシップ機がスナップドラゴン835を搭載しているのは当たり前として、4GB RAMの構成は処理能力として現段階では問題はない。本体容量が128GBでさらにmicro SDカードが挿せるのはなにかと便利なので良い点。
顔認証ロック解除
ロック解除のスピードも実用性に困らないレベルで、優秀。しかも、いちいち電源ボタンなど触る必要もなく、カメラが顔を認証すればすぐにロック解除をするので便利。
暗所では、指紋認証を使えば済む話なので、V30のロック解除は2017年のスマホとしては完璧といえる。
ワイヤレス充電対応
これに関しては書く必要はないですね。Qi規格のワイヤレス充電に対応しております。
コスパはそこそこ悪くない
ドコモやauで契約すると実質負担価格とかなんちゃら割引で・・・実際の本体価格がわかりづらいので、参考価格としてスマホを個人輸入できるエクスパンシスの価格で考える。
一応、価格.comでのドコモで購入した場合の参考価格はこちら(2月14日時点)
機種変更 & 新規契約 | 約4万9千円 |
MNP | 約2万6千円 |
エクスパンシス(2月14日時点)では
本体価格 | 消費税 | 送料 | 合計 |
7万2435円 | 3477円 | 1400円 | 7万7312円 |
V30の総合的な性能を考えると悪くない価格といえる。エクスパンシスではギャラクシーNote8の本体価格だけでも約8万9千円するので、ライバル機よりも1万円以上は安い価格といえる。
残念な点
フラッグシップ機としては不合格のインカメラ
LGジャパン公式サイトよりスクリーンキャプチャ: http://www.lg.com/jp/mobile-phone/lg-L-01K
個人的にセルフィーを撮らないし、インカメラの性能は重視していないけれど、それでもV30のインカメラは落第点といえる。“良い点”のデュアルレンズのところで紹介した2つの動画を見てもらえればわかると思う。一応Note8との比較動画をもう一度動画を載せておきます。
Note8とのセルフィーの比較でも、最初の40秒ほど、セルフィーの動画であるけれど、Note8の方が輪郭や細部まで映しているし、後ろの雲までキレイに見える(ダイナミックレンジが優れている)。これ以外の動画でも、V30のインカメラの性能は非常に評判が悪く、フラッグシップ機としては不合格の烙印が押されている。
ソフトウェア・アップデートの遅さ
グローバル版のV30は12月末にようやくソフトウェアが8.0のオレオに更新された。日本版は購入時ですでに8.0にアップデートされた状態なのだそう。LGとサムスンはソフトウェア・アップデートが非常に遅い。ソニーなど迅速にアップデートする企業に比べれば致命的に遅すぎると言って良い。
現状、アンドロイドOSでの追加の機能の更新などは大して重要な要素ではない。それよりも、セキュリティの向上が一番重要で、「ソフトウェアをアップデートしない = セキュリティに脆弱性が残ったまま」ということになる。
私はスマホのセキュリティは非常に重要と考えているので、こういったLGやサムスンの対応はあまり好意的にみていない。恐らく、LGやサムスンはソフトウェア・アップデートを今後も重要視していないと思われるので、この点は非常にマイナスといえる。
初のOLEDスクリーン故の問題
スクリーン焼け
一部の端末では、スクリーン焼けが報告されている。恐らく、初期端末だと思うので、日本で発売されている機種に関してはスクリーン焼けが起こる可能性は低いと思う。勝手な憶測ではあるけれど、auやドコモで契約すれば、交換などにも対応してくれる可能性があると考えられるので、もしスクリーン焼けが購入後すぐに見られるのであれば出来るだけ早く購入店へ持っていった方が良い。
サムスンのAMOLEDよりは劣るか
スマホの有機ELパネルの技術に関してはサムスンに軍配か。その理由は、LGのOLEDは均一に光を発していないという報告があり、それを証明する写真などが出回っている。普段使いで困る問題では全くないので気にする人は気にするし、そうでない人はなんとも思わないと考えられる。
LGはOLEDを採用するのがこれが初めてなので、こういった細かな問題が出て来るのは致し方ないとはいえるけれど、フラッグシップ機の競争は厳しい世界なので、こういった問題は深刻になり得る。
動画の手ブレ補正には不満
もう一度Note8との比較動画1:18からの4K動画で車内から撮っている動画や歩行時の動画を見てもらえればわかるけれど、ギャラクシーNote8と比べると動画の手ブレ補正は完敗といえる。
LGは以前から動画の手ブレ補正に課題が多く、それをまだ解決できていないと感じられる。私は動画の手ブレ補正はかなり気にするタイプなので、LGの手ブレ補正はかなり残念な点と思っている。
その他、残念な点
ステレオ・スピーカーではない
V30は底面のモノラル・スピーカーしかなく、そのスピーカーもフラッグシップ機としては至ってフツーの性能といえる。HTC U11などとは違い、電話口を使ってスピーカーが鳴ることはない。イヤホン・ジャックは間違いなくスマホ界でナンバーワンの性能であるけれど、スピーカーは大したことはない。
4GB RAMは長期的にみて不利か
2018年のフラッグシップ機は6GBが主流になると思われ、長期的にみてV30のRAMが4GBなのは不利になるかもしれない。ただし、決して4GBがダメという訳ではない。現状であれば、4GBは適正な容量といえる。実際、グーグルPixel2のRAMは4GBである。しかしながらライバル機であるNote8は6GB積んでいるということもあり長期的な視野で見れば6GBあれば文句なしといえた。
まとめ
V30は気が利く、抜け目のないオールラウンダーだと思う。何かが非常に劣るという訳でもなく、むしろ細かい点にまで気を使っているといえる。しかしながら、何かが突出しているという訳でもない。堅実なファブレットといえばそうなるのかもしれない。
大まかなマイナス・ポイントはインカメラとソフトウェア・アップデートの遅さで、これ以外は特別気にかかる問題は少ないと思える。人によってはインカメラはあまりに問題にしない人も多いだろう。個人的には動画の手ブレ補正の悪さは改善してもらいたい。
むしろ、オールラウンダーというだけあってV30は2017年のフラッグシップ機としてかなり優秀な部類に入る。バッテリーの駆動時間はナンバーワン、実用性に優れる超広角レンズと十分な性能を誇る標準レンズ、ベゼルレス・デザインに6インチのOLEDディスプレイ、高性能イヤホン・ジャック、防水IP68に耐衝撃性ミリタリー・スタンダード810Gの認証、スナップドラゴン835、4GB RAM、128GB + micro SD、顔認証ロック解除、そしてワイヤレス充電、フラッグシップ機としては良心的な価格。
マイナスな点を考慮しても余りある程のメリットがV30にはあるとわかってくれるだろうか。しかも細かい点にまで対応してくれている。私は常々「ないよりかは有ったほうが良い」とこのブログで書いているけれど、V30はイヤホン・ジャックやmicro SD対応、ワイヤレス充電などなど、あったら便利だと思われる細かい機能を全てを揃えてくれている。
V30+はオールラウンダーで、総合的に優秀なファブレットと断言できる。もし気になるのであれば、是非検討してもらいたい端末である。