2019年のアンドロイド・フラッグシップ機に搭載されるチップ(SoC)「スナップドラゴン855」について情報が集まってきたので、まとめたいと思う。
Qualcomm (クアルコム)が昨年12月に発表した際、CPUが最大45%、GPUが最大20%性能アップと公表した。その「スナップドラゴン855」を搭載したレファレンス機(見本用)がCES(ラスベガスで行われる世界的な見本市)にて紹介され、AntutuやGeekbenchといった有名どころのスコアが公にわかるようになった。
当然の如く昨年の「スナップドラゴン845」よりも「処理能力の向上、カメラ性能の向上(Image Signal Proccessingの向上)、省エネ」など様々な面でパワーアップしているが、驚くべき点はAntutuでは「iPhone XSに匹敵」するスコアを叩き出した点である。
アイキャッチ画像、記事内画像はQualcomm公式サイトよりスクリーンキャプチャ:https://www.qualcomm.com/products/snapdragon-855-mobile-platform
公式動画
スナップドラゴン 855 の ベンチマーク
Antutu スコア
36万444点
(Android Authorityより)
iPhone XS、2018年アンドロイド・フラッグシップとの比較
デバイス | スコア |
リファレンス機 スナップドラゴン855 |
36万0444点 |
iPhone XS | 35万5856点 |
Huawei Mate 20 | 30万6608点 |
ROG Phone | 29万6726点 |
これは本当にびっくりといえる結果である。スナップドラゴン855の数値 (約36.0万点)がiPhone XSシリーズに搭載されているA12Bionicのチップ(約35.6万点)を僅かながら上回っている。数値は毎回前後するので、ほぼ同等の性能といえる。
私のブログでも何度も書いているけれど、アップルのAシリーズのチップは「常にアンドロイドよりも1年以上、先を走っている」と豪語していたけれど、遂に「その差が縮まってきた」といえる。
(数値はほぼ同等ではあるものの、A12 Bionicを搭載したiPhone XSは9月に発売されており、すでに4ヶ月以上経っているので依然アップルの方が優れており、「逆転」とまではいえない)
Huawei Mate20 (約30.7万点) の数値は現時点ではアンドロイド・スマホでは最高値である。Mate 20に搭載されている「Kirin 980」は今年の11月に発売されているMate 20シリーズから採用されているチップである。スナップドラゴン855はそのチップよりも5万点も高いスコアであるので、如何にスナップドラゴン855が高いパフォーマンスであるかが伺い知れる。
ROG Phone (約29.7万点)については、2018年のQualcomm社のチップ「スナップドラゴン845」を搭載したスマホの中で最高値を叩き出したのがこのROG Phone (ASUS製)。855のスコアが(約36.0万点)なので、昨年のチップよりも21.5%ほど性能アップといえる。
ROG Phoneは「ゲーミング・スマホ」と呼ばれており、カメラなどの性能よりも「ゲームに特化したスマホ」である。そのため、RAMを8GBも搭載し、高負荷のかかる状況でも継続してスムーズにゲームができるよう設計されている。現状ではこういったゲーミング・スマホがスナップドラゴン845を搭載したスマホでは最も高いパフォーマンスを発揮する。
もちろん、このスナップドラゴン855のスコアはあくまでレファレンス機のスコアなため、実用機であるギャラクシーS10やXperia XZ4、OnePlus 7のスコアとは違うだろうが、おそらく実用機はこのスコアを上回ってくるだろうと予想している。
Geekbench 4 スコア
シングル → 3518点
マルチ → 1万1178点
(Android Authorityより)
iPhone XS、2018年アンドロイド・フラッグシップとの比較
デバイス | シングル | マルチ |
リファレンス機 スナップドラゴン855 |
3518点 | 1万1178点 |
iPhone XS | 4797点 | 1万1264点 |
Mate 20 Pro | 3368点 | 1万0376点 |
iPhoneのAシリーズ・チップはシングル・コアの処理能力に重きを置いているため、シングル・コアでの数値は依然かなりの差がある。私は技術的なことを熟知している訳ではないため、自信をもって説明はできないが、Qualcommの場合はシングルよりもマルチでの数値を重視する方針なため、シングルの数値はどうしても劣ってしまう。
アンドロイド機の中では、Mate 20シリーズとほぼ同等のシングル・スコアといえる。
マルチのスコアはXSとは僅差(きんさ)で、処理能力では1歩も2歩も先を行っていたアップルにようやく近づいてきたといえる。
AI と 機械学習(マシンラーニング)
QualcommもAIや機械学習による処理にかなり力を入れてきたらしく、AI系の処理能力は従来のスナップドラゴン845よりも855は3倍の処理能力をもつ(らしい)。
これらの処理能力がどこまでの効果をユーザーにもたらすのかはわからないけれど、「見えないところ」で黒子のように働いているのでしょう。
省エネ設計
7nm (ナノメートル)の規格になったことにより、より省エネになるといわれている。バッテリーライフが従来のチップよりも向上するのでこれはユーザーにとってはメリットが大きいといえる。
チップ(SoC)競争の構図 (余談)
スナップドラゴン855は7nm(ナノメートル) という規格で製造されており、これはiPhone XSシリーズ、XRのA12 Bionic、Huawei Mate 20シリーズのKirin 980と同等の規格になる。
基本的にチップ(半導体回路)の線の幅が小さくなればなるほど、高性能化と省電力性能が向上する。つまり、スナップドラゴン855は先行する「アップルとHuaweiに追いついた」形となる。
スナップドラゴン855を搭載するアンドロイド・スマホは今年の2月末〜3月に発表されるサムスン・ギャラクシーS10やソニー・Xperia XZ4 などに搭載される予定である。つまり、スナップドラゴン855は「半年ほど遅れている」という状況といえる。
しかしながら、すでに上記で解説したように、そのパフォーマンスは非常に高い。ベンチマークのスコアはHuaweiのKirin 980を上回っているし、AntutuのスコアにいたってはiPhone XSのA12 Bionicとほぼ同等だといえる。
今までAntutuのスコアでアップルのAシリーズのチップがスナップドラゴン・シリーズに並ばれるというのは記憶がない。半年ほど遅れてはいるもののスナップドラゴン855の性能はかなり高いといえる。
まとめ
2019年のフラッグシップの搭載されるスナップドラゴン855は7nm (ナノメートル)の規格になったことにより、昨年の845よりも大幅に性能がアップされるのは間違いない。
Antutuで約36万点、Geekbenchで1.1万点を超えてきており、このお陰で、2019年のアンドロイド・スマホは処理能力においては今までにないほど先を行くiPhoneシリーズに近づいてきた。
その他、AI系の処理、バッテリーライフの向上など、アンドロイド・スマホには良い追い風がきているのではと思う。
スナップドラゴン855は「ギャラクシーS10、Xperia XZ4、OnePlus 7」などに搭載されるハズなので、2019年のアンドロイド・スマホの動向に期待しましょう。
新しいモノ好き、最新モノ好きな人は、スナップドラゴン855を搭載したスマホを待つべきで、あと3ヶ月ほどすれば、新しいアンドロイド・スマホが続々と登場するだろう。
当然ながらスナップドラゴン855を搭載したスマホは高額になるので、コストパフォーマンスを重視する人であれば、スナップドラゴン845を搭載した2018年のフラッグシップ・モデルは価格の下落が進んでいくので、そろそろ買い時なのかもしれない。